イタコとは、東北地方の北部で活動する巫女の一種で、降霊術や霊視によって死者や祖霊の言葉を人々に伝える役割を持った存在です。
その語源には諸説あり、「斎（いつ）く」が訛ったとする説、アイヌ語のitak（語る、宣う）から作られたとする説などがあります。

イタコは主に盲目あるいは弱視の女性によって継承され、古くから口寄せ（降霊）や加持祈祷、卜占などを行ってきました。

最盛期には500人以上いたとされるイタコですが、現在では青森県内には正統なイタコは6人しか残っていないと言われています。
そのほとんどが高齢者となっており、伝統の習俗であるイタコの存続が危ぶまれている状況です。

数少ないイタコの中で、ひときわ若いイタコが松田広子です。後継者のいないイタコの世界の中で、現役最年少である松田広子は「最後のイタコ」と言われています。

松田広子は生まれつき目が弱いわけではありませんでしたが、病弱だった自身の人生を支えた存在であるイタコの道に自らも入ることを決意し、15歳で修行を開始。19歳になると一人前のイタコとして活動しはじめました。

現在では、松田広子はイタコという伝統習俗を世に残すために精力的に活動しながら、多くの人々を口寄せによって占っています。

イタコは主に青森県津軽地方や南部地方で活動しています。青森県の津軽と秋田県の羽後のイタコの習俗がそれぞれ1979年と1983年に国の無形民俗文化財に指定されており、後世に伝えなければならない重要な伝統となっています。

青森県の下北半島にある霊場・恐山（おそれざん）は、毎年夏に行われる例大祭（恐山大祭）にイタコが集まり、多くの人々がイタコの口寄せを求めて殺到することで有名です。

恐山にある菩提寺はイタコには関与していませんが、古来より「死者の魂が集まる場所」と考えられてきた恐山に明治時代の後期頃から参詣者が増え、それに伴ってイタコが開山期間だけ出張してくるようになったと言われています。

イタコは降霊や霊視を用いて死者や祖霊の魂を呼び寄せ、生きている者にその言葉を伝える役割を持っています。

死者の霊と交信し、その言葉を伝えるという行為はシャーマニズムに基づいていますが、実際にイタコが行う「口寄せ」は、故人の魂を降ろすことでご遺族に直接言葉を伝え、ご遺族の心を癒すグリーフケアを行うなど、ある種の心理カウンセリングとしての機能も果たしています。

その他にも、氏子の寄合などに呼ばれた際に祖霊を自身に憑依させ、その言葉を伝えることで地域の相談役としての役割も果たしていたとされています。

イタコは主に「口寄せ」という降霊術を用いて、死者や祖霊の魂を降ろしたり、神仏を呼び寄せたりすることでメッセージを伝え、占いを行います。

その他にも、「オシラ様」と呼ばれる東北地方北部の家庭に伝わる守り神を遊ばせる、「オシラ様あそばせ」によって、その家庭の繁栄や五穀豊穣といった運気の向上を願う神事も行います。

「口寄せ」とは降霊術全般を指す言葉ですが、イタコの行う「口寄せ」はその中でも特に死者や祖霊を降ろす「仏口」（ホトケクチ）を中心としたものです。

実際に行われるイタコの口寄せは、「イラタカ数珠」と呼ばれる長い数珠を手で擦り合わせて音を立てながら、「経文」を唱えることで行われます。

数珠の音が鳴り響く中ひたすら経文を唱えることでトランス状態に入り、死者や祖霊の魂、あるいは神仏と繋がります。そうして受け取ったメッセージをイタコ自身の口を通して伝えるのが「口寄せ」です。

イタコが「口寄せ」を行う主な目的は死者の言葉を生きている者に伝えることですが、その他にも占いのための口寄せも行っています。
その場合は主に神様を降ろす、いわゆる「神口」（カミクチ）に相当する口寄せが行われます。占いたい事柄に応じて様々な神を降ろすことにより、悪い物事を祓って物事の吉凶を占うのです。

「オシラ様あそばせ」とは、2体の「オシラ様」という守り神のご神体をイタコが遊ばせる神事の一種です。

「オシラ様」とは青森県や岩手県の民間信仰として伝わる家庭の守り神で、蚕（かいこ）の神、馬の神ともいわれます。各家庭にオシラ様が祀られており、小正月の時期にあたる1月15日頃にオシラ様を遊ばせる儀礼によって、家運の繁栄や五穀豊穣を祈願します。

「オシラ様あそばせ」はイタコが2体のオシラ様を手に持ち、「祭文」を朗々と唱えながらオシラ様を様々に動かして「遊ばせ」ます。この儀礼によって家の穢れを祓い、それからの一年が良い年になるように祈願するというものです。

日本最後のイタコ松田広子の占いは、日本三大霊場に数えられる恐山で口寄せを行う「本物のイタコ」松田広子が、厳しい修行を経て身につけた「口寄せ」を通じてあなたの人生や恋愛など様々な運勢を占います。

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